生涯に亘って受け止めのできる法人を目指して

社会福祉法人むさしの郷

想いを受け取る【むさしの青年寮 主任 徳江由起子】

みなさんは今年の桜を楽しみましたか。例年は、花が咲き始めた頃から散るまでを利用者の方々と観察しながら楽しむ青年寮の桜も、今回はあっという間に葉桜になってしまいました。

その桜のつぼみがまだ硬く、けれどもしっかりと花を咲かせる準備をしている1月、私たち職員も取りかかるものがあります。4月からの1年間、利用者の方々にどのような支援を行っていくのかという「個別支援計画」の立案です。そして、個別支援計画を立てる上で必要となってくるのが、利用者の方ひとりひとりのニーズの把握です。ニーズとは「欲求・要求」と同義されます。

ここからは極端な全くの例えですが、ある施設に入所している利用者の方の中に、甘いジュースが大好きで食事の時もそれだけしか口にしない方がいたとします。その方のいま見えているニーズは、「ジュースだけ、飲めればいい。」「ご飯は、食べたくない。」となると思います。では、この方の支援を行う上で必要なことは何でしょうか。ニーズだからと「食事の時に飲みたいジュースだけを提供する」のではやはり支援ではないですし、それでは不健康になってしまうからと、支援者側(職員)から「決まった食事時間にみんなと同じ物を提供する」のも利用者の方の想いを汲んだ支援ではないと考えます。

そもそも「ジュースだけ飲みたい。」というこの方のニーズは、本当のニーズなのでしょうか。「ジュースだけ」という言う理由はなんなのでしょうか。もしかしたら、口腔内に問題があって咀嚼することが困難なのかも知れません。もしかしたら、固形物を飲み込むことに対しての違和感が強いのかも知れません。もしかしたら、食べ方や好き嫌いなどを強く指摘された過去があって、食べることに対して嫌悪感を抱いているのかも知れません。こう考えるとこの方の本当のニーズは、「口の中の痛みを取りたい。」「飲み込みが楽な物を食べたい。」「以前のように食べることを楽しみたい。」などとなり、支援すべき内容も明確になるのではないでしょうか。

この4月で就職して丸14年が経っても、「言語コミュニケーションを主とする利用者の、その発せられた言葉だけにとらわれて本当の利用者の思いを見過ごしていないだろうか。」「非言語コミュニケーションを主とする利用者に対しては、『いつもこう、きっとそう』という予測や経験値だけで判断していないだろうか。」と自問自答の日々です。

でもきっと、利用者の方々は本当のニーズに繋がるヒントを、様々な形で常に私たちに投げかけているはずです。それをキャッチできる、感度の良いアンテナを持ち合わせた職員でありたいと思います。